徹底分析中古車相場
更新日:2018.11.14 / 掲載日:2018.07.24
【90年代国産スポーツ特集】R34やFD RX-7など全10モデルの相場を徹底分析してみ
物事には流行り廃りというものがある。クルマの世界も然りで、火がついたように一大旋風を巻き起こし、潮が引くようにブームが去っていくというのは、今も昔もよくあること。スポーツカーもそんなジャンルのひとつで、かつて持て囃された時代があった。それは今から30年近くも前のこと。1990年代は国産スポーツカーの黄金期と呼ばれ、さまざまなメーカーから次々とニューモデルが発売された。そんな時代のモデルは、現在でも買えるのだろうか。今回の企画は、メーカー別に90年代スポーツカーの中古車事情を徹底調査。どのクルマなら手頃に買えるのか、編集部なりの回答を用意してみたいと思う。
90年代国産スポーツカーって、どんなクルマ?
スポーツカーという存在は、自動車史において度々スポットライトが当てられてきた。たとえば第二次オイルショック前(70年代半ば~後半)、高級スポーツカーが脚光を浴びていたのは記憶に新しいはず(いわゆるスーパーカーブーム)。それと同じく80年代の終わり頃、空前の好景気を迎えた日本の自動車業界は過去にないほど活気に満ちていた。とくに1989年は、ホンダは1000万円クラスの高級スポーツカーNSXを発表(翌年発売)し、日産はスカイラインシリーズのスカイライン GT-Rを16年ぶりに復活させた。トヨタは新型MR2を発表したかと思えば、マツダは今なお続く名車、ロードスターを発売開始。これらの新型車ラッシュを皮切りに、90年代に突入した後も高性能スポーツの新型トヨタ スープラ、三菱からはランエボやGTO、スバルはインプレッサ WRX STiなど、スポーツカーが続々と登場した。これが、いわゆる90年代国産スポーツカー黄金期と呼ばれているものだ。
現在中古車の価格は高騰。その理由とは?
最初に結論を述べておこう。90年代の国産スポーツカーは、コンディションのよいものは大抵プレミア価格が付いている。その理由は、米国の法規制、いわゆる「25年ルール」の影響があると考えられている。これは、米国内で正規販売されておらず、製造から25年経過していない車両は走行できないというもの。かの地では日本車を含む輸入車を、個人が好き勝手に取り寄せて公道を走らせることはできないのだ。しかしその規制は25年経つと解除される。それと、日本製スポーツカーの高騰がどう結びつくのか。それは、米国では日本の90年代スポーツカーは有名で、マニアの需要が極めて高いということ。25年以上前(つまり1993年以前)のコンディションのよい中古車が次々と米国に流出しているため、中古車相場はどんどん右肩上がりとなっている。
日産編:スカイラインGT-R(R32~R34型)の相場は?
日産 スカイライン GT-R(R34型)
90年代国産スポーツのイメージリーダーと言えば、スカイラインGT-Rだろう。現在はスカイラインから独立して「GT-R」となったものの、今でもスカイラインGT-Rの時代に想いを馳せるファンは少なくない。最初に、第二世代と言われるR32型からR34型までの中古車平均価格を見ていこう。
モデル名 | 中古車平均価格 |
スカイラインGT-R(R32) | 347万円 |
スカイラインGT-R(R33) | 330万円 |
スカイラインGT-R(R34) | 723万円 |
R34型GT-Rの中古車が高騰!
2018年現在、前述の「25年ルール」の影響で米国への流出が懸念され、相場が高いのはR32型。しかし、明らかに高騰しているのは意外にもR34型だった。物件数は、R33型のみやや少ないが、各世代に大きな開きはない。これは、R34型が国内のファンに対しても強い吸引力を持つ証拠。第二世代GT-Rの完成形とも言われるR34型は、走り、スタイルともにこの時代のスポーツカーの魅力が大いに詰まっているから、相場が大幅に高くなっている。
気になるコンディションは?
半数近くの物件が走行距離8万km以上。3割以上が10万kmを超えており、改造車、修復歴ありも少なくない。正直、コンディションのよい物件を探すのはとても困難な状況だ。とは言え、現在でも完全に入手不可能というわけではない。さらに調査してみると、2018年7月19日現在、R34型は3万km以下の低走行車が数件流通するのを確認できた。ただし、これらの相場はいずれも1000万円以上。また、R32型もフルノーマルの良質な物件が数台あるようだ。
日産 スカイライン GT-R(R32)
日産 スカイライン GT-R(R33)
トヨタ編:スープラ(A80型)とMR2(SW20型)の相場は?
トヨタ スープラ(A80型)
スープラのフルノーマル車はほぼ皆無
A80型スープラは、90年代国産スポーツのなかでもっとも入手難易度が高いクルマのひとつ。中古車として流通する個体のほとんどが改造車で、走行距離も10万km以上というのはザラ、しかも中古車自体がかなり少なくなっている。とくに目立つのがヴェイルサイド製エアロパーツ仕様で、このスタイルが好みのユーザーならば選択肢は広くなるが、それでも全体の物件ボリュームはスカイラインGT-Rには及ばない。またコンディションが不明瞭な物件も多く、とくに人気のターボ仕様「RZ」の状態のよいものは極めて入手困難となっている。逆に「SZ」系ならば、ホイールやマフラー交換程度のライトチューンかつ5万km前後の低走行な物件は、今でもわずかに流通している。このように、プレミア価格に値するような物件が皆無だから、平均価格は現実的なゾーンに落ち着いている。
MR2は良質な車両が現存している
2.0L 4気筒ターボのコンパクトなミッドシップであるMR2は、スープラよりもひとクラス下のポジション。いわゆるエントリースポーツとも言えるので、極端に高額な物件はあまり見られない。物件数はスープラより多く、この時代のスポーツカーとしては手が出しやすいだろう。物件の大半は多走行かつ改造車なのは仕方のないところだが、よくよく調べてみるとフルノーマルの状態のよい物件もいくつか散見される。走行距離3万km未満だと、200万円~300万円の予算があれば入手可能だ。もちろん、コンディションにこだわらなければ、50万円前後の予算でもOK。
トヨタ MR2(SW20)
トヨタ スープラ(A80)
ホンダ編:NSX、シビック/インテグラ タイプRの相場は?
ホンダ NSX(NA)
ホンダは、90年代から00年代半ばにかけて初代NSXを生産していた。新車価格が1000万円オーバーの国産車としても有名で、現在の新型NSX登場後も根強いファンが多い。また、この時代のスポーツカーを語る上で欠かせないのが、「タイプR」という存在。NSXのピュアスポーツ仕様として92年に設定されたのを皮切りに、95年にインテグラ、97年にシビックに設定され、ホンダ製スポーツカーの顔となっている。
モデル名 | 中古車平均価格 |
NSX(NA) | 616万円 |
インテグラ タイプR(DC2) | 100万円 |
シビック タイプR(EK9) | 137万円 |
以前と比べて初代NSXが安くなった
かつてNSXは、国産中古車のなかでも群を抜いて値下がりしにくいクルマだった。しかし今回調査したところ、以前ほど強気な価格という印象は受けない。400万円を割り込む物件も珍しくなくなっており、頑張れば手が届くモデルになってきた。またGT-Rやスープラと異なり、NSXは全体的に走行距離が少なめで、過激な改造車が少ない傾向にあることも覚えておこう。この年代のスポーツカーのなかでは、予算さえ確保できれば入手は比較的楽な部類である。しかもホンダでは初代NSXを対象としたリフレッシュプランも実施中。パーツ不足などの心配がないのも嬉しい。ちなみにタイプRのフルノーマル&極上コンディションのものは、3000万円近いタグを掲げられているのも確認できた。
シビック タイプRは探しやすい
シビックとインテグラの両タイプRは、ほぼ同程度の価格帯となる。しかし、物件が多くて買いやすいのはシビック。相場は、プレミア価格とまでは言えないものの、走行距離10万km以上の物件が100万円以上の価格で販売されており、今でも高いニーズがあることがわかる。その多くはマフラー、車高調、シート交換済みなどの改造車となっており、フルノーマルの物件は200万円が相場。一方のインテグラは、物件が少ないことを除けば、シビックと概ね同じような状況だ。こちらもガレージ保管のフルノーマル車が200万円オーバーで販売されている。両者ともに3万km以下の低走行車が極めて少ないのは、やはり実用車がベースだからであろう。
ホンダ シビック タイプR(EK9)
ホンダ インテグラ タイプR(DC2)
マツダ編:RX-7(FD型)、ユーノスロードスターの相場は?
マツダ RX-7(FD)
マツダの代表的スポーツカーと言えば、ロードスターとRX-7だ。前者は今まで絶え間なく生産が続けられるが、後者は2000年代初めに生産が終了。後継モデルのRX-8が登場したものの、こちらもすでに生産終了。ここではRX-7(FD型)と、初代ユーノスロードスターの相場を分析していく。
モデル名 | 中古車平均価格 |
RX-7(FD) | 222万円 |
アンフィニRX-7(FD) | 162万円 |
ユーノスロードスター | 83万円 |
RX-7の相場は新車時価格よりも高い
集計の都合上、RX-7はアンフィニブランド時代の数値と、マツダブランド時代の数値を分けている。両方に共通して言えるのが、物件ごとに中古車価格の落差が大きいこと。10万km~15万km以上で修復歴ありだと100万円以下の予算で買える一方、高年式かつ3万km以下の低走行車ならば500万円以上の物件も珍しくない。以前と比べると劣悪な個体はかなり淘汰され、いま流通しているのはそれなりにメンテを受けたものが多い印象があるが、それでも修復歴あり車は4割近くに上る。コンディションにこだわったクルマ選びをするなら、新車時価格に近い300万円前後程度の予算が欲しいところだ。
今でも手頃な価格で楽しめるユーノスロードスター
最後に、身近なスポーツカーであるユーノスロードスターを紹介したい。上の表からわかるとおり、90年代国産スポーツカーのなかで、もっとも相場が低く、かつ物件豊富なので非常に手が出しやすい。やはり改造車は多いが、ライトチューンに留まるものが中心なので、ノーマルに戻して乗ることもできそうだ。さすがに3万km以下の極端な低走行車は皆無だが、このクルマはロータリーを積むRX-7とは異なり、機関系がとても丈夫。内外装のよさそうなものを選べば、安心して長く楽しめるのがポイント。また、最近はユーノスロードスターのレストアプランをマツダが実施している。フルレストアコースはかなり高額(約500万円)だが、ベースとなる車両さえあれば、ほぼ新車に近い状態に仕上げることが可能(現在は1.6Lモデルのみ実施中)。また、ソフトトップなどの欠品パーツが、この機会に販売されることも決定している。ユーノスロードスターのアキレス腱とも言えるソフトトップの劣化に泣かされるユーザーが多かったが、当分は心配する必要がなくなった。
ユーノス ロードスター
ユーノス ロードスター
まとめ
以上が90年代国産スポーツ10モデルの相場動向である。三菱、スバルの代表モデルであるランエボ、インプレッサWRX STiに関しては、過去に調査しているので、下記のリンクを参照されたい。総括すると、「25年ルール」によって相場が影響を受けているのは現在R32型GT-Rだが、ほかの車種に関しては全ての相場が極端に跳ね上がっているわけではなさそうだ。というのも、プレミアが付くほど優れたコンディションの車両の多くは、すでに中古車市場の表舞台から姿を消しており、数値に直接影響を与えていないと考えられるからだ。
最後に、グーネット編集部がオススメの1台を挙げるとすれば、やはりユーノスロードスターだろう。スポーツカーとしての楽しさが詰まった1台なのは言わずもがなだが、中古車相場の観点から言っても、手頃な価格でそれなりのコンディションの車両がまだ入手可能。しかも、前述のとおりタイヤやソフトトップなど消耗品も再販されたわけだから、今からでも十分楽しめるのだ。